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Episode1
俺は外の騒がしさで、目が覚める。体を起こすと、カーテンの隙間から日光が漏れ出ていた。眩しさに目を細めながら、カーテンを開ける。
外には、沢山の人が行き交っていた。商人から仕事人、女子供……。今日も活発だな、と思う。
布団を畳み、準備しておいた服に着替える。動きやすい服装に着替えて、母さんに作ってもらった、風通しの良いカーディガンを着る。そのまま扉を開けて、外に出る──。
──カチャッ……。
扉は何故か、空回りだった。何度捻っても扉は動かない。不満に思った、その時だった。
目の前から何もかも掻き消えた。真っ白な空間に、1人取り残される。先程までのような騒がしさはなかった。
ただ、背後に。何かの気配がある。
何故か振り向くことが出来ない。足元に影が伸びる。視界に黒い手が忍び寄り、ただならなぬ気配を感じた瞬間、これは『魔王』だと確信した。
昔、感じたこの威圧は、魔王に……。
視界いっぱいが手で覆われる寸前、記憶が押し寄せてくる。
いつも通りの日常、それはすぐに火の海に変わる。建物が崩れ、国民が血を流している。辺りには魔物らが、楽しいとでも言うように飛び回っている。それは夢のように現実味がない。だがこれは。
──俺の暮らす国で起こったことだ。
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