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晩年、じいちゃんは部屋にこもってばあちゃんの首と会話していた。襖ごしに漏れ聞こえてくる笑い声はとても楽しげで、どう考えてもひとり分じゃなかった。
古いものには命が宿り、現実と非現実の境を曖昧にしていく。
深くよどんだ沼に落ちたら最後、沈んでいくしかない。おれの心はもう首人形に囚われてしまったのだ。
「なぁ、おれのこと覚えてるか?」
睫毛を撫でると内側からかすかな震えが伝わってきた。
閉ざされた目蓋がぎこちなく上がり、おれを見て朗らかに笑う。
「また会えたね」
(了)
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