私の立ち位置

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美麗先生みたいに割り切れたら楽だけど、私にはできなかった。 命を扱う医師という職業柄、救える命と救えない命があるのは理解している。 「理知が循環器内科医になって俺は嬉しい。心臓血管外科医と循環器内科医、タッグを組んで命を救っていこう。俺、オペ、失敗しないから。確実に命、救うから。理知、俺に着いてこい!!」 過酷だった産婦人科専攻医時代を思い出し気持ちが沈んでいる私を、蓮が肩を叩き、励ましてくれた。 蓮は執刀したオペで患者を1度も死なせた事がないらしい。 的確な判断と器用な手先。 「蓮は優秀で羨ましいよ」 実力の差に凹む。 「俺は理知の真面目で努力家なとこ、尊敬してるけどな。みんなが行きたがらない救命救急センターに、自ら立候補して行ってるんだろ。勤務外の時間もヘルプで入ってるし。で、外来診療当番の日に葛城病院に搬送した患者の所に行って、病状把握してる。偉いよ」 「……ありがとう」 蓮に励まされ、元気が出た。 「循環器内科に早く戻れたらいいな」 院内に託児施設が併設されてるのもあり、半年以内に復職すると聞いてる。 だけど、時短勤務で外来診療だけ担当し、夜間勤務はできないから、私がヘルプで入らないといけないかもしれない。 産婦人科に回されてから、循環器内科の医局に立ち入っていない。 勤務外の時間も専攻医からオンコールで呼び出される事が多いから、救命救急センターにヘルプで入れない。 佐久間先生と顔を合わせるのは緊急帝王切開の時だけで、全く話せていない。 それもあり、佐久間先生は私が住むマンションに訪れなくなった。
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