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「……母体搬送からの緊急帝王切開後に新生児手術」
先天性心臓疾患のある新生児の緊急手術ができる病院は限られている。
心臓の左心房と右心房を仕切る壁(心房中隔)に生まれつき穴が開いている心房中隔欠損を外科的手術もしくはカテーテル治療で閉鎖を行う。
欠損孔の大きさ、位置、合併疾患の有無などによってどちらの治療法が良いかは、心臓血管外科医、循環器内科医、エコー医が入念な検討により判断し、手術を行う。
緊急搬送された妊娠32週の母親の胎内から1580gの女の子の赤ちゃんを取り上げ、看護師さんに託す。
赤ちゃんはすぐに同室内にあるハイブリッド診察台へ連れてから、緊急手術を受ける。
「ファロー四徴症だな。心室中隔欠損をカテーテル、ブラロック・トーシッヒ短絡(シャント)手術と右室流出路再建術の外科手術を行う」
鎖骨下動脈と肺動脈をバイパスする手術をブラロック・トーシッヒ短絡(シャント)といい、未熟児の赤ちゃんに行うのは難易度がかなり高い。
母体の帝王切開の縫合と後産の処理を行った後、新生児手術を覗きにいく。
循環器内科医は佐久間拓人部長、麻酔科医は崎岡直実先生、心臓外科医は新しく赴任したと思われる男性医師。
手術の様子が映されたモニターを見る。
MICS(ミックス 小切開低侵襲手術)で、小さな心臓の外科手術を行なっている。
心臓だけでなく、食道閉鎖症と上気道閉塞の手術も行った天才外科医の華麗なる凄腕に見惚れる。
不器用な私には到底できない神の手に、羨望の眼差しを向けた。
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