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ターゲットは高校生と決めている。
中学生はまだ発育途中でお子様だ。一方で大学生は要らん化粧をし始める。それに比べて高校生はすっぴんでもみずみずしく、かつ大人の女性への階段は登り始めており、体はほとんど大人。やはり高校生に限る。
初めて見かけたのは、夕方の電車だった。すらりとした体だが、運動部なのか適度な筋肉がついているように見える。目立たないけれども整った顔立ちに、サラサラとした長い黒髪。それを、校則が厳しいのか地味なゴムで一つに結っている。好みだった。
まずは降りる駅を把握した。即座に時間と駅名をスマホにメモする。この時間に繁華街もない駅で降りるとなれば、おおかた実家の最寄駅といったところだろう。
次に朝電車に乗る時間もチェックする。実家の最寄駅で早朝から張り込んでいればすぐわかった。遅刻間際になっているのか、しばしば遅くなり多少の前後はあったが問題ない。そうして行きの電車や帰りの電車を把握し、同じ電車に乗るようにしていく。何号車に乗っているかという点も毎日記録をとれば、大体縛られてくる。火曜と木曜は帰りが遅めなので、どうやら週二回部活をやっているらしい。
学校の特定は簡単だ。朝降りる駅や制服を調べればすぐわかる。どうやら女子校らしい。学校外で男遊びをしているタイプには見えないので、男性慣れしてなさそうだと思うと、落とすのは楽かもしれないな。
一度、部活終わりの電車の座席でうとうとと眠っているところ、隣に座ってみたことがあった。特に警戒されなかったのでバレでいないらしい。鞄の口が閉まっていなかったので中を覗くと、教科書、ノートや筆記用具のほか、部活で使っているであろう体操着や制汗剤があった。
そして制汗剤を見た瞬間、急に興奮を覚えてしまった。女子高生が日常的に使用しているもの。女子高生の香り。もちろん体操着の方が気になるが、制汗剤であれば、なくなっても不審に思わないのではないだろうか。
周りの誰も見ていないことを確認し、彼女の鞄に手を伸ばして制汗剤を掴む。そしてそのままさりげなく自分の鞄にしまった。
彼女は何も気付かず眠っていた。心臓がバクバクと音を鳴らしていて聞こえてしまうのではないかと思ったほどだが、彼女は自分の最寄駅に到着すると慌ててよだれを拭いて降りていった。
彼女との接点はこれが初めてだった。
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初めて話しかけたときは、『家は十分くらい』と漏らしていた。駅から徒歩十分となると場所はだいぶ絞られる。あのままあとをつけてもよかったのだが、あえて初対面は帰ることで「ワンチャン狙いではないスマートな男」を演出した。その方が好印象だし、警戒もされない。それに高校生は大体実家暮らしだろうから、家の場所を特定してもあまり意味はない。勝負は二度目以降だ。
あとはSNSの特定。SNSは動向がわかるので便利だ。特に写真は情報量が多いので助かる。カフェにでも入って写真をアップしてくれれば良いのだが……。そう思っているとちょうど、彼女がカフェに入って行った。自分も入店し、やや離れた席に座る。そして気付かれないように観察し、店名と彼女が頼んでいるメニューの名前を検索してみる。
『今日からの期間限定新作!ストロベリーチョコレートフラペチーノ!!めっちゃおいし〜やっぱスタパ最高♡』
あった。タイミングや写真の角度からしてもこれだろう。アカウントのトップページに飛び、こっそり非公開リストに入れる。俺の大切な「女子高生リスト」だ。
写真のアップに関しては「顔写真でなければ大丈夫」と思っている人も多いようだがこれは間違いだ。写真は情報量が多い。メインで撮っていたつもりでないものも映り込んでいることがある。更にリアルタイムで投稿してくれると時間も特定できる。あの時あの場所あの角度でこの写真を撮れた人物、となると、誰だかわかってしまうのだ。
今話しかけようか? とも思ったが、もし「運命の人」を演出するのであれば、次のタイミングにした方が効果がありそうだ。新作発売日に来ているということは、次回も新作発売の際、発売日かその付近の日に来る可能性が高い。そのときにこちらも同じ新作を買っていれば「運命」と思ってもらえるというわけだ。
そしてその読みは当たった。
『わーっ次の限定メニュー、桃だ!絶対初日に飲みに行く……!』
リストに入れた彼女のアカウントを逐一チェックしていると、そう書いていた。これで限定メニュー発売日にあのスタパに現れることはほぼ確実だ。
メニューの発売期間をチェックする。この初日の夕方に行けば確実だろう。一応夕方より少し前からお店に入っておくとしよう。新作を買って、彼女が席に着いたら新作を片手に話しかける。完璧だ。
「こんにちは。また会えたね」
さて、三回目の再会はどこにしようか。
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