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「あなたね。それ捨てないと逮捕されるわよ」
江戸は老中定信の側室の息子真田幸貫の娘の嫁ぎ先の息子の異母姉妹の――うんたらかんたら学歴職歴がどうこううんぬんの希子、と名乗った老婆は、希子の手にしたスマホを指して言った。
「SNSでの誹謗中傷、依存症、眼病、腰痛頭痛の根源。そしてグローバルな犯罪の温床。等々の弊害を鑑みて、スマホもネットも全て廃止された現代に。さっさと隠すか捨てるかしなさい」
希子は、老中定信の側室の息子真田幸貫の娘の嫁ぎ先の――――あ~~~~、かったるい、何でこんな長い名前なんだ。
取り敢えず未来希子と呼ぼう。その未来希子の言葉に、希子は唖然とした。スマホ、ネット廃止の未来? 進化じゃなく? で逮捕?
夫のお祝い発明品、あのトースターもどきは、つまりはタイムマシンだった? ……それをまず認めて、と。
それで未来に飛ばされてしまったらしい。
てかどういう未来なんだ。長ったらしいことが蔓延った、何かとめんどくさそうな世界。
とにかく、タイプスリップしてその時代の自分と出会ってしまった場合、宇宙が爆発するとか消滅するとか……一応そんなことは起きずに済んでいる模様。
ピンポーン、とインターホンが鳴る。
「庭でトマトが採れたから、お裾分け」と入ってきたのは、あの頃より老けたお隣さん。
「あら、ご親戚のお嬢さん? よく似てること。あたし、紫式部の娘藤原賢子の友人のいとこの息子との間に設けた娘の〇×△のはとこの――父の名は創一母の名は兼子の次女の白金トキで職歴――学歴――結婚歴――住所歴――」と名乗られた。
そうだ、隣人は白金さんという名前だった。30年後も隣人のままらしい……けど、それ以上詳しい情報は別に要らないんだけど。
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