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緑の怪人
「お主ら何者だ?」
正信が声をかけた。二人とも、黒い衣装をまとい、顔を黒く炭で塗り、靉靆(メガネ)をかけている。病んで目が悪いのか?
「僕たち、サバイバルゲームをやってたら、道に迷ってしまって……」
「気づいたら、あそこに倒れていて……目を覚ましたら、顔に血がついていたんで。あの〜これって映画かテレビの撮影ですか?」
「何? さば……いば……? てれび……?」
正信は、額にシワを寄せて、聞きなれない言葉を繰り返そうとした。助太刀に来た二人が静かに右手を刀の柄に置いた。それを見た若い男が言った。
「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ。」
そう言いながら前に歩み出たときだった。ドドドという音と共に、地面が大きく揺れ始めたのである。急に辺りが暗くなった。
その場にいた正信たち三人と助太刀の侍二人と黒衣装の二人は、立っていることができず、しゃがみ込んだり、尻餅をついたりした。
直ぐに揺れは治ったが、辺りは夕暮れ時のように暗くなったままである。
すると、メシッ、メシッと足音のようなものが聞こえてきた。座り込んだ七人が音の方を見ると、霧の中に緑色の鎧のようなものを身につけた大男の姿があった。しかも、ゆっくりと歩きながら、自分達の方へ向かってきているではないか!
顔は丸い兜で覆われていて、どういう顔なのかわからない。背丈は一丈(約三メートル)ほどある。とても人とは思えなかった。
「きゃ!」とゆりが声を上げた。
皆が立ちあがろうとすると、大男は立ち止まり、それを静止するように両手を前に出した。七名全員の動きが止まった。
と、その時である。急に大男は左を向いて、左手をその方向に突き出した。その直後に左腕から光が飛び出た。
「おお!」
眩しさに目を閉じながら、思わず正信が口を開いた。
「カラーボール!」
黒衣装の女が隣の男へ言いながら、腰に下げた巾着から素早く何か取り出して男に手渡した。そして、二人同時に色のついた球を大男の顔を目がけて投げつけた。
パシュー! 球は二つとも大男の顔に命中して、破裂した。鮮やかな黄色と桃色が頭部に広がった。
不意をつかれて驚いたのか、大男はバランスを崩してよろけて、ゆっくりとひっくり返ってしまったのである。
「逃げろ!」
黒衣装の若い男が叫んで、走り出した。他の六人もその後について霧の中へ走り去ったのだった。
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