side アオイ

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身体がダルい。ついでに頭も重い。 「………最悪の目覚めだ……」 次の日、まだ金曜日だという事実に愕然としながら目が覚めると、部屋のノックの音が聞こえてきた。 俺はハッとして「はいっ」と声をあげる。 「葵?起きた?」 「え、翔真!?……ちょ、待て!開けるな!」 なんで翔真がくるんだよ!そんなこと今までめったになかっただろ! すると、クスクス笑う翔真の声が聞こえてきた。 「開けないよ。おばさんたち、今日朝早くでるっていうから、朝ごはん俺が作るねって言いに来た」 「………あ、そ、そう……わかった」 「うん。着替えたら来てね」 トントン……と翔真が階段を降りていく音が聞こえると俺は息を吐いた。 ……あいつ、平然とした声してたけど、どういう神経してんだ……昨日、あの場面見られたってのに。 俺は髪の毛をかきあげながら、舌打ちする。 「大学……一人暮らしにすりゃ良かった」 翔真の両親が帰ってくるまであと1年ちょっと。 俺は大学生になってもとくに実家を出るつもりはなかった。つまり……翔真が高校卒業するまではまだ同居生活が続く。 「やっていけんのかな」 俺ははぁ、と溜め息を吐きながら制服に着替えた。 「おはよう」 「………はよ」 リビングに降りると既に翔真しかいなかった。 卵を焼いたものや、サラダなど簡単なものが皿に盛り付けられている。 「あ、ありがとな朝飯……」 「ううん。どうぞ、食べて」 ダイニングテーブルにふたりで座り、朝飯を食べはじめた。俺はひたすらテレビを見た。内容など頭に入ってこないが、テレビから目をそらしたら翔真から話しかけられそうで…。 そうして大体食べ終わったとき、翔真が「ねぇ」と言った。 「………えっ」 「あのさ、そんなに意識されるとこっちも困るから。普通にしてくれない?」 「………あっ、わ、悪い……」 翔真の言葉に俺が目をそらしながらいうと、翔真は箸をおいてこちらをじっと見た。 「……葵」 「あ?な、なに?」 「葵はさ、今まで受験であんま考えてなかったかもしれないけど、………したことあるよね?昨日の俺みたいなこと」 「……えっ」 したことあるよね?……だと? それはなんだ、ひとりでしたことがあるかってことか?それともまさか誰かとそういう経験があるかってことか……? 「……お、お前は……、どうなんだ」 「……え?なにが?」 「いやだから…………ひ、ひとりじゃなくて彼女とか………いるのか」 「彼女?」 ぽかんとした顔でこちらを見る翔真を見て、俺は口元に手を当て、顔を背けた。 ーーいや、だから、バカか俺は! なんでそんなことわざわざ聞いてんだよ! 「いやごめん、今のなし。忘れて……」 翔真の顔が見れない。恥ずかしい。 って、いや……恥ずかしいこと言ってんのは、考えてんのは、俺じゃねぇか。かっこわる。 「彼女………は、いまのとこまだいたことないけど……」 「え、……そう、なのか?」 「うん。特に女性に惹かれないみたい、俺」 さらっとそういう翔真をつい見ると、目があった。昨日のスマホの画面を思いだし、カッと顔が赤くなる。 「そ、そ、それってどういう意味…………」 「………あぁ。もしかして、俺が葵のこと好きで、そういうことしたいと思ってると、期待した?」 「!ばっ……!!」 んなわけねーだろ!と、俺はテーブルをバンっと叩いて立ち上がった。 目の前では、翔真が余裕そうな顔で微笑してる。 「そんなに全力で否定しなくてもいいよ」 「いや、いやマジで!お、俺は!彼女がいるのに俺なんかをその、オカズにしてひとりでしてるお前なんか、見たくなくて!」 「ふふ、オカズって。葵、下品だよ」 「う、うるせぇ!!」 お前の方が、そのキャラでよっぽどなことしてんじゃねーか!! 「男子高校生なんだから、普通の欲求じゃない?性欲くらいあるよ。むしろ、葵はないの?全然?」 「は?!いや、………それは、もちろん、その、人並みには……」 「人並み?人並みって?俺がしてるとこ見て興奮するくらいにはあるってこと?」 「はぁ!?」 ガタッと椅子をひく音がして、翔真が立ち上がった。 目線が同じくらいになる。 おれは、テーブルを挟んで目の前に立つ翔真を睨むように見ていたら、翔真がゆっくりとテーブルを回って近づいてきた。 「……あ?おい、翔真!」 「なに?」 「や、……寄るな!」 「なんで?あぁ、やっぱり俺が怖いの?」 葵の姿見て抜いてたから? と、翔真は俺の耳元に顔を近づけ、囁いた。 ゾクッと、全身の血液が逆流する気がした。 「こ、怖くねーよ!でも、触るなっ」 「どうして?俺はもっと恥ずかしい姿を葵に見られてるんだけど?」 「っ、そ、それはだから悪かったって………」 「許そうと思ったんだけど、……そういう葵の態度見てるとやっぱりちょっと、無理かな」 「………は?」 翔真は、翔真がなにを言っているのかわからない俺に向かって、微笑んだあと、顔を寄せてきた。 ーーキスされる!? ビクッと身体が反応して、俺は思わず目をつむった。 ……だが、数秒待っても、唇や頬に刺激は感じなかった。 「……っ、翔真?」 「……葵。反応がかわいすぎるよ」 「は!?」 「まさか、キスもしたことない……とか言わないよね?もう18でしょ?」 俺の頬を撫でながら、翔真は首を傾げながら聞いてくる。 ーーなっんて、失礼な奴なんだ!そういうお前はなんだ!?キスしたことあんのか?彼女いないっつってたよなぁ!? 「………お前、まさか彼女でもない奴にキスしてんの?」 「……そうだね。告白されたことは何回かあるし、彼女じゃなくてもお試しでいいっていわれて付き合ってみた子はいる。結局ダメだったけど」 「はぁ!?お試し!?」 なんて羨まし……!!いや、けしからんことをしているんだ!こいつはっ!! 「お、お前、もしかして家の中と外じゃキャラ違うのか?家ん中じゃ、父さんも母さんも真面目でいい子の翔真くんで通ってるんだぞ」 「それは当たり前でしょ。3年間も住まわせてもらうんだから、この家では礼儀正しくいなきゃダメでしょ。追い出されたところで、行く場所もないんだから」 「…………ま、マジか」 翔真のいうことは聞いていれば正論に聞こえた……。従兄弟の家っつっても、翔真からしたら他人の家だよな。きっと100パーセント気も抜けないだろうし……。 「………だから代わりに外ではヤンチャしてるのか?」 「ヤンチャ?俺が?俺は至って真面目な優等生だよ。成績下がったことないだろ。素行だって問題ない。人並みに恋愛みたいなことしてるだけで」 「………女の子に惹かれないって、言ったじゃねーか」 「……言ったけど、……葵?なんか話が段々ずれてるけど、葵は、なんなの?俺が、キレイで真面目な、そういうことには見向きもしない本物の優等生じゃなくて落ち込んでるの?それとも……俺が、葵を考えてエロいことしてたのに、自分を好きって言わないから、拗ねてるの?」 「!!」 俺がばっと顔を上げると、翔真の顔が近づいてきた。やめろ、と動いた口に向かって、翔真が微笑む。 「やめろっていうなら、俺を突き放すくらいしたら?別に抱き締めてるわけじゃないんだから、簡単でしょ」 「………っ、な」 「ねぇ、葵。本当は興味あるんじゃないの?俺が葵のこと考えてしてるの見て。本当は、昨日の夜、自分の部屋に戻ってから……葵もひとりでしたんじゃないの?」 俺のことを考えて。 ーーと、翔真が言ったあと、俺の身体を引き寄せるように抱き締めてきた。 同時に口元に、唇を押し当てられる。 「ーーっ、ん、!んんっ!!」 「………はぁ………だから、嫌なら本気で突き放しなって……」 「……う、うるせ……ふざけん……っあ!?」 「……ねぇ、やっぱりどうなの?昨日。したかったけど、できなかったの?」 翔真は、右手で俺のズボンへと手をずらした。そして、昨日、こいつのいうように、したくてもできなくておさまらなかった身体の熱がバカ正直に反応する。 「やっ……めろ!翔真!」 「これ、このまま学校行けるの?1日、辛くない?」 「あ……や、やだ………」 カチャカチャと、俺のズボンのベルトを外す音が聞こえると、俺はガクッとその場に座り込んだ。無理だ。立っていられない。 「………しょ、翔………」 「うん。大丈夫。昨日俺見られてるし、今度は俺が葵の見てあげる」 「いっ……いや、まっ、み、見ただけだろ俺は……!さ、触ってない!」 「あー、なら、いいよ。葵も俺の触る?」 翔真は、俺のズボンの中を触りながら自分のそこにも俺の手をつかんで押し当てた。 ーー信じられない。なんで。 ぐっと固くなっているそこを撫でると、「ん……」という翔真の声が漏れた。 昨日、ベッドの中で聞いた声。 「ば、学校……あ、朝、だぞ」 「もう大学受かったんだからいいでしょ?俺は優秀だから、1日くらい休んでも平気」 「じ、自分でいうなぁ……あ、っ、ぁん」 ーーヤバい、想像より何倍も気持ちいい。 人に触られるとこんなに気持ちいいのかよ。 もう、ズボンの中はぐちゃぐちゃだ。 翔真が俺自身をなんのためらいもなく、触って強く動かしてくる。 段々そこに、熱いねつが集まって苦しい。 「翔真……ほんと、やだ、こ、こんなところで……っ」 「………じゃあ、部屋に行く?早くしないと葵もうイきそうじゃない?」 「………い、いく……むり、さ、触らな……っあ!?」 ガリっと先の部分を引っ掛かれると、俺の身体に痛みと快感が走る。出したい。今すぐ出したい。俺は、翔真に抱きつくように腕を回した。 「葵、」 「あっ、あっ、……翔真、ダメだここで、なんか」 「待って、葵。……ちょっと、我慢して」 「……!?あ!?や、えっ!?」 ドサッと床に押し倒され、身体が反転した。 なんだ、と思った直後には、下半身にびっくりするほどの感覚が沸いてきた。 翔真が、俺のズボンのあたりに顔を埋めていた。そして、今にも弾けそうな俺のそれをベロっと舐めあげ口に含んだ。 ーー全身がビリビリする。 「ーーんーっ!あ、っ、翔真!翔真ぁ、やめろっ!」 「……………たいひょうぶ、だして」 「しょ、あっ、あ!あー……っだ、」 「ん、……ふぁ、」 「んっ!ーーー………!!」 ビクビクっと、背中がのけぞった。 やばい、頭ん中までねつが回った。 俺は、数秒、欲望を吐き出した余韻を感じていたが、けほっ、という翔真の声でハッとした。 「翔真!」 「…………うん、大丈夫、いっぱい出たね」 「っ!いや、あ、悪い!……っていうかお前が!咥えるから…………!!」 「うん。気持ち良かった?葵」 ペロッと俺が出した白い液を飲み込むように見せた翔真を見て、俺は翔真を睨み付けた。 「あほか!!おま……っ、とりあえず拭け!」 「え?いいよ、まだやるでしょ?」 「は!?はぁ~っ?んなわけあるか!学校行け!!」 「え、自分だけ気持ちよく出しておいて俺のは放置?酷いことするね」 「うぐ………っ」 すると翔真は「冗談」と言いながら立ち上がった。 「遅刻だけど、学校行こうかな。葵は?」 「………俺、は、もう自由登校だから………」 「あ、そうなんだ。いいな」 「お前は!まだ、学年末テスト終わってないだろ!その、悪かっ、た……けど、」 「……はいはい。これ洗ったら行くって」 翔真はそういうと、洗面所に向かった。 俺は自分の身の回りを片付けながら、頭を抱える。 ーーやばい、マジでどうしよう。朝から翔真と、こんなことしてしまった。 落ち込む俺に、戻ってきた翔真はにこやかに話しかけてきた。 「イくときの葵、かわいかったな」 「あぁ!?」 「やっぱりちゃんとベッドでしたいね。今日、夜、一緒に寝ない?」 「はぁ?おま……本当に頭大丈夫か!?」 「大丈夫。とりあえず学校行くけど、葵、家にいるなら、朝ごはん片付けといてくれる?」 鞄を持ち上げ出かける準備をする翔真に、俺は「わかったよ」と答えた。 「片付けとく」 「ありがとう。じゃあ夜は21時に俺の部屋ね」 「あぁ……って、は!?」 じゃあね~と、手をひらひらさせながら、翔真は部屋を出ていった。 俺はガクッとテーブルに突っ伏すように項垂れる。 「ふざけんな、あいつ……!!」 夜は俺の部屋?なんだそれ!! 俺は、バクバクする心臓を押さえながら、行くつもりで着た制服を脱ぎ捨て、ソファーにボサッと投げ捨てた。 ーーこの気持ちがなんなのか、俺はまだ理解できないし、正直知りたくもなかった。
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