あの人へ花束を

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 一度こうと決めたことは、相手が校長先生でも譲らない、負けない。  見ていてハラハラすることもあるけど、部員にとっては頼もしい先生。  女の先生だけど。わたしは、女子だけど。  初めて会った時から、好きだった。今でも。  ──たぶん、恋している。先生に。  「なんで、わかったのよ」  「見てればわかるって、それくらい」  「……そんな、あからさまだった?」  「いや、そういうんじゃないけど」  そこで滋は、なぜか言いにくそうに言葉を切る。今までよどみなくしゃべっていたのが嘘みたいに、黙り込む。  首を傾げるくらいに長い間を空けた後、ようやく口を開いた。爆弾発言とともに。  「俺は、ずっと見てたから、理桜のこと」  「…………え」  それこそどういう意味、と聞きたかったけど、言葉にならなかった。できなかった。驚きすぎて。  生まれた時からのご近所さん、小学校の登校班も同じの幼なじみ。低学年ぐらいまでは取っ組み合いの喧嘩をするのもわりと日常茶飯事だった。そんな奴が?  「……そ、そんなこと、いきなり言われても」  やっとそれだけ言うと、滋は困ったように笑う。
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