あの人へ花束を

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 気丈な先生が、きれいな顔でいつものように微笑みながら、目尻の涙をぬぐった。その仕草に、我慢している涙があふれそうになるけど、まばたきをしまくって必死に寸前で止める。  「ありがとう。しっかり頑張ってね、部長さん」  「……それと、先生、これ。うちで育てたんです」  「まあ、きれいなガーベラね。さすが宮元さん」  先生の笑顔の方が綺麗です、と思わず心の中で言った。  家の花壇から選んできた、ピンクと黄色、そして白のガーベラが1本ずつの、小さな花束。  花言葉はそれぞれ、熱愛、究極の愛や美、希望。  ……先生が左手に着けている指輪にはもちろん、とっくに気づいていた。薬指に新しい指輪がはまってからの、先生の幸せそうな表情にも。  明言されるとショックを受けそうで、あえて聞いたことはないけど、きっともうすぐ結婚するのだ。私たちの知らない誰かと。  先生が幸せになるのなら、かまわない。だけど具体的に相手を知ると嫌な気持ちが生まれてしまいそうだ。勝手だけど、そこは知らないままでいたい。  花言葉に込めた想いは、表向きは先生の愛の成就を、幸せを願うもの。不自然ではないはず。
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