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あの人へ花束を
朝夕の花壇の水やりは、園芸部員の日課だ。
わたし以外にも数人が在籍しているのだけど、家が遠いとか実質は帰宅部に近いとかで、特に早朝は出てこない部員が大半だった。
だから3年生が引退してからは、朝の水やりはほぼ、わたし一人の役目になっている──はずなのだけど。
「なんで今朝も来るのよ。暇なの?」
「暇なんだよ、悪いか」
今はオフシーズンだし、と水泳部に入っている幼なじみは言う。3月になってからなぜか毎朝、わたしが登校するのを見計らうかのように現れては水やりを手伝っていくのだ。
オフでもジョギングとか自主練習はあるでしょ、と言ってやると「あ、それは学校までの往復でやってるから」と返してくる。いいのかそんなので。
まあ、学校中の花壇に水をやるにはそこそこ時間がかかるから、誰だろうと人手があるのは正直ありがたい。こいつはお調子者ではあるけど、言ったことはいちおう言った通りにやってくれるし。
「じゃあ、こっちからあそこまでの花壇、全部頼んだわよ。わたしは中庭行ってくるから」
りょーかい、と受けた幼なじみに校舎前の花壇をまかせて、中庭へと向かう。
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