トモダチ・カード

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トモダチ・カード

 トモダチ・カード。通販でそんな商品を見つけたのは偶然だった。  実に胡散臭い。カードを購入してお願いするだけで、理想の友達が生まれるカードだなんて。  しかも一緒にイモウト・カードだの、コイビト・カードだのも売っているのである。そんなお金を払うだけで友達やら妹やら恋人やらが生えてくるなら、誰も苦労なんてしないというのに。  それでも私がそのカードを購入したのは、価格がギリギリ私のお小遣いでも払える金額だったから。  同時に――追い詰められていたから。友達がいない、独りぼっちの教室に。 「これが、トモダチ・カード……」  コンビニ決済でお金を支払い、送られてきたのは一枚の金色のカード。材質はプラスチックのように見える。サイズは、クレジットカードとか銀行のカードくらいだろうか。本当にこれを使うだけで、理想の友達に巡り合うことなんてできるのか。  説明文には、こんなことが書いてある。 『このカードは、どのような友達が欲しいのかをお願いしながら、貴方がつけた名前を呼ぶことで中身が顕現します。理想の友達と交流しながら、貴方が貴方自身を見つめ直すことを目的とした商品です。いくつかの条件を満たすと自動で顕現が解除されるのでご注意ください。  ①本体となるカードが破損した時。  ②その友達を、貴方が否定した時。  ③貴方が「さようなら、もういいです」と別れを告げた時。  一度顕現が解除されると、二度と友達は出現しません。予め、ご了承ください。』  ようは、一度壊れたり、お別れを言ってしまうともう友達はいなくなってしまうということらしい。  私はざっと使い方を読んだ後、手順通り友達を呼び出してみることにしたのだった。 「私の名前は、鎌倉里衣子(かまくらりいこ)です。お友達は……同じ女子中学生の、“サトミちゃん”です。私と、友達になってください」  カードのスイッチを押しながらそんな呪文を唱えれば、カードから金色の靄のようなものが噴き出すことになる。驚く私の目の前で、金色の靄は人の形になったのだった。  現れたのは、私と同じ中学校の制服を着た女の子。 「初めまして、サトミです」  黒髪のセミロングに、青い目をした美少女は。にっこりと微笑んで、私に頭を下げてきたのである。
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