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星の塔台
部屋の明かりを消し、外へと出ると、頭上は見事な星月夜。こんな夜は星占も捗るだろう。手にした紙に星の位置と動きを書き付けていく。
『十六の年、おまえは運命の相手と会うだろう』
星占のたび、父はそう言っていた。この「塔台」の傍の森に捨てられていたという自分を、拾って育ててくれた養父。それを言う時の父は、めったに表情を変えない顔に、いつも少しだけ寂しそうな色を浮かべていた。
運命など信じない、ずっと父さんのそばにいる。
そう返すと必ず、父は微かに苦笑いしたものだ。星を読んで占の結果を王宮に伝える仕事をしていた彼からすると、自分の発言は確かに、反応に困るものだったろう。だが、本心だった。
だってその「運命」とやらは、自分から故郷と実の両親を奪ったのだ。父が見つけるのがあと数日、いや一日でも遅ければ、自分自身も天に召されるところだった。
そんな自分が今では星占を生業にしているとは、皮肉なものだ。だが仕方なかった。急な病に倒れた父の、最期の願いを叶えるためには。
『「星読のアトラス」を絶やさないでくれ』
──あれから、三年。自分は今年十六になった。
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