星の塔台

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 全て順調にいくと、思っていた。……だがあの夜、家は突然の襲撃を受けた。守っていたはずの者たちは殺され、中には裏切った者もいたらしい。じきに、家族の元にも暴漢は迫り、私は抵抗を試みようとした。だが両親、兄や妹は一様に、逃げろと言った。私が生きていれば家は続く、ここで命を落とす真似はするなと。  正直に言おう、私は彼らの言葉に素直に従った。剣を捨て、家族を見捨て、万一の時のため用意されていた隠し通路から外へ出て、逃げたんだ。──怖かった。剣を習ってはいても本気で戦ったことなど無いし、聞こえてきた人の悲鳴、生身の人間が斬り合う音、あれが自分に降りかかるかと思うと、怖くてたまらなかった」  情けないな、と自嘲とともに吐き出した時、目からこぼれる物の存在に気づく。頬を伝うそれは、涙だ──なんてことだろう、泣いたことなど、世継ぎの儀を済ませてからはなかったというのに。  いや増す情けない思いに、文字通り頭を抱えた。  ……と、背中に、そっと触れてくる感触。振り返ると、洗い物干しを終えたらしいアトレが隣に立っており、こちらの背中をさすっている。目に一杯の涙をためて、ヴォルギルを見上げて。
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