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「すでに謀反人たちは鎮圧し、一族の生き残りは捕縛、監獄送りにしております。もう御身を脅かす者はおりません故、すぐ王宮にお戻りください。殿下……いえ、陛下。
エルゼスト・ヴォルギル・アルダート十三世陛下」
──あの謀反劇から、二年が経ったある日。
国王となった青年は再び、深い森に入り、塔を目指した。
側近二人とともに戻った王宮は、争いの跡こそまだ生々しかったが、辛うじて逃れた侍従や女官たちが戻り、少しずつ以前の姿を取り戻しつつあった。前国王夫妻と兄王子、妹王女はやはり助からなかったが、生き残った者たちの手で精一杯の供養がなされた。
謀反を起こした主犯、王家の親族だった公爵家は取り潰され、一族は全員処刑された。せめて幼子は、と新国王は躊躇したが、一切の禍根を残してはならぬと進言され、やむなく刑の許可を出したという。
表向きの騒動は治まったものの、国で最大の領地を管理していた公爵家の廃絶による影響は、しばらく続いた。領地をいったん国の預かりとし、近隣の貴族に文句の無いよう振り分ける手続きが終わってようやく、謀反は本当に平定されたのだ。
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