星の塔台

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 意識は、そこで暗くなった。心身が限界を訴え、今度こそ身体は、土の上に倒れた。  森と、塔台が建つ平地の境目に、人影が見えた。  こんな夜中に、こんな所に人が?  首を傾げるどころか、明確な驚きだった。木々が深い森の外からは絶対に見えないはずのこの塔を、訪れる者などほぼいない。王宮への連絡すら、専用の伝書鳥を使うのだ。「星読のアトラス」はほとんど他人に会うことなく生活し、生涯を終えるのである。自身の師匠である先代と、次代となる弟子を除いて。  人影は、その場でゆらりと揺れたかと思うと、地面に引っ張られるように倒れた。しばらく見ていたが、起き上がらない。  迷った。ここには自分一人しかいないし、何かあった時に助けを呼ぶ当てもない。自分が非力な事実はよく自覚していた。  だが──放っておいて、死なれるのも後味が悪い。墓を作るのは構わないが、自分が放置したせいで、となるとどうにも夢見が悪そうな気がする。……仕方ない。  手を尽くした後で召されたならば、相手の寿命であったのだと考えて差し支えないはず。そう心に言い聞かせ、下へ向かうため階段へと足を向けた。
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