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目を覚ますと天井が見えた。ただし見覚えは全くない。精緻な細工を施した物ではなく、単なる石造りの、無骨とさえ言える天井。
考えているうちに、己の置かれた状況を思い出してきた。……そうだった、自分は……逃げてきたのだ。
父母を、家族を襲い、室内に火を放った暴漢たちから。
いや、あの暴漢は知らぬ者ばかりではなかった。友情を育んだはずの者、忠誠を誓ったはずの者も含まれていた。
謀反。その二文字が頭を占める。
そんな事態が起こり得るなどとは、想像したこともなかった。誰もが忠実であり、心から認めてくれている、と思っていたのだ。──だがそれは、錯覚に過ぎなかったのか。
不満の種はいつしか蒔かれ、彼らの中で育ち、芽吹いたというのか。信じられない、信じたくないことだったが、そうだと認めるより他、なさそうだ。
となれば家族も、真に忠実だった者たちも、無事ではいるまい。彼らの最期を思うと涙がこぼれる。一度堰を切った涙はどんどん溢れてきて、こめかみと髪を濡らしてゆく。
目を腕で覆った時、扉の開く音がした。涙を隠そうという気にもなれず、そのままでいると。
「起き、ました?」
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