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空を走るあなた
まるで、空を走るようだと思っていた。あなたの姿を。
──そうして、ついには、空へと消えていった。
私があなたを初めて見たのは、高校のグラウンドだった。
その頃──高校に入学したての頃、私は毎日を鬱屈の中で過ごしていた。第一志望の進学校に落ちて、二次募集で入った高校。行きたい学校ではなかった上に知り合いが一人もいなくて、教室で誰ともしゃべらない毎日。部活にも興味が持てなくてどこにも入らなかったから、本当に誰とも話をしない日も、珍しくなかった。
さりとて家に帰っても、母親の期待に応えられなかった私に対する愚痴か、お説教を聞かされるだけだったから、さっさと帰る気にもならず。たいていは、ギリギリまで図書室で時間をつぶしていた。本を読むのは好きだったから。
その日も私は、下校時間十分前のチャイムが鳴るまで、図書室でシェイクスピア戯曲集を読んでいた。物語とか、演劇の世界は今でも好きだ。ここではないどこかへ思いを飛ばして、自分ではない人物に成り代わることができる。たとえ悲劇の主人公でも、自分が自分以外の誰かだと、夢想するのは楽しかった。
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