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会話からすると二人は母娘のようだ。ということは店員さんは、ここのご主人の奥さんなんだろうか。
「おにいちゃんおねえちゃん、あそんで!」
目を輝かせて女の子、加奈ちゃんは言った。こら、と奥さんがたしなめる。
「加奈、お父さんは?」
「ねてるー」
「もう、あの人ったら」
困り顔で奥さんはつぶやき、加奈ちゃんを連れて奥へ行こうとした。そこに中埜くんが声をかける。
「加奈ちゃん、何して遊ぶ?」
その一言に、母娘が同時に振り返った。加奈ちゃんは期待に満ちた顔、奥さんは当惑した表情で。
「ばばぬき!」
「いいよ、トランプ持っておいで」
「あらまあ、ごめんなさい。いいのかしら」
「大丈夫ですよ、別に急ぎませんから」
そう言って中埜くんは微笑んだ。その表情がずいぶんと優しく見えて、私は初めて彼に対し、どきりとした。
結局、私も混ざって、3人でババ抜きをすることになった。トランプなんていつ以来だろう。
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