夕立が呼んだ恋

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「まあ、夏だからね。夕立はしょうがないよ」 「中埜くん、今日は部活だったの」 「うん、来月に試合があるから。青山さんは?」 「私も部活。今月終わりが予選で」  ああ吹奏楽だっけ、と返されてびっくりする。私の部活を知っているとは思わなかったから。 「よ、よく知ってるね」 「うちの中学ブラバン強いから。誰が入ってるかぐらいは」 「え、えっと中埜くんは」 「バレー。身長足りなくって補欠だけど」 「……私も、予備要員。クラリネットの人数多くて」  2年にもなって正メンバーになれないなんて、情けないと思っている。オーディションの結果だったから余計に。  笑われるかもしれないと思ったけど、実際は違った。 「いつ出番が来るかわかんないし、お互い頑張ろうよ」 「──そ、そうだね。ちゃんと練習しとかないと」  声を少し詰まらせながら応じた時、お店の扉が開いた。  姿を見せたのはここの店員さんらしき、両親より少し若い感じの女の人だ。白い帽子と白いエプロンを着けている。 「あなたたち、学校帰り?」 「あ、はい。そうです」  店員さんの質問に、中埜くんが答えた。
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