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「しばらく止みそうにないでしょ。よかったら入ってきなさい」
「え、でも」
「止むまで宿題とかしていったら? お茶とお菓子ぐらいは出してあげる」
そう言って店員さんは、にっこりと笑う。
中埜くんは私の顔を見て首を傾げた。「どうする?」と聞かれているように感じたので、私はちょっと迷ってうなずいた。
「すみません。じゃあしばらくおじゃまします」
「いえいえ。どうぞ」
店員さんに招かれて入ると、そこは小さな食堂だった。引き戸の内側にかけられた暖簾を見ると『定食 うどん 蕎麦 かわのや』と書かれている。しんとした店内の様子からすると、今は休憩中なのだろう。
こんな店があるなんて今まで知らなかった。毎日通っている道なのに、意外と目に入っていないものだなと思う。
「はい、タオルどうぞ」
「あっ、すみません──ありがとうございます」
「そんなかしこまらないでいいから」
くすくすと笑う店員さんが渡してくれたバスタオルで、私と中埜くんはそれぞれに、自分の頭と制服、そして制カバンを拭く。
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