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思わず悲鳴がこぼれてしまって、一瞬の後、恥ずかしくなった。
ちらりと中埜くんを見ると、目をパチパチさせて私を見ている。ますます恥ずかしい。
「雷、苦手?」
「…………うん、小さい時、外で遊んでてやっぱり夕立に降られて。ひとりでいる時にずっと雷が鳴ってて、それから怖くて」
打ち明けると、彼は微笑んだ。さっき加奈ちゃんに向けたのと同じように。
「大丈夫だよ、今は建物の中だから」
それはわかっているのだけど、反射的に感じてしまう恐怖は抑えがたい。三たび鳴る雷に、どうしても「ひいっ」となってしまう。
ふいに、右手が温かくなった。びっくりして見ると、中埜くんの左手に包まれている。手の大きさと温度に、さらに驚いた。
「今は、ひとりじゃないし。じきに終わるよ」
しがみつく加奈ちゃんの背中を右手で撫でながら、私の手を包む左手に力を込める。その力強さと温かさで、こわばっていた体が少しだけ、ゆるむような心地になった。
そうして、中埜くんの言う通り、雷はだんだんと間遠になっていって、止んだ。
しばらくすると雨音も弱くなってきた。
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