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「そろそろ止みそうね。あっ、お茶のお代わりする?」
二階から降りてきた奥さんに尋ねられる。後ろから、やや眠たそうな顔で姿を現したのが、きっとご主人だろう。
「いえ、大丈夫です。そろそろ失礼します」
「あら、ちゃんと止むまでいていいのよ」
「それにはおよびません。そんなに遠くないので」
「じゃあ、このお菓子持って帰りなさい。加奈と遊んでくれたお礼」
と、紙で包装された和菓子らしきお菓子を数個、奥さんは袋に入れた。2人分。
「はいどうぞ。あなたも」
差し出された袋を受け取り「ありがとうございます」と返す。その発言が中埜くんの声と重なり、思わず目を見合わせた。
「おにいちゃんたち、かえっちゃうの?」
「ごめんね。また遊びに来るよ」
優しく言う中埜くんにうなずいた後、加奈ちゃんは私の方を見る。期待に満ちたまなざしに、応えないわけにはいかなかった。
「私も、また来るね」
「うん! ふたりでいっしょにきてね」
二人で、と言われても。反射的に困ってしまったけど、
「わかった。必ず来るよ」
中埜くんはごく自然に応じてそう言った。指切りまでしている。
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