僕と彼女、私と彼の、クリスマスイブの一夜

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 俺の言葉をさえぎって、友梨香が怒ったように言う。 「相性がいいところから始めたらいけないの? 私はあの時、すごく幸せだった──その気持ちをまた感じたいって、思うのは悪いこと?」 「そうじゃないけど、でもそれは」 「あなたが言いたいことはわかる。特殊な状況だったから、って言うんでしょ」 「……そうだよ。違うか」  皮肉混じりの問いに、彼女は「違わない」とはっきり返した。その上でこう続ける。 「だから私だって、あれからずっと考えてたわ。自分の感情がどれだけ本当なのか──だけど変わらなかった。変わらないどころか、あなたに会いたい気持ちが日に日に強くなった」  だから神様にお願いしに来たの、と友梨香は涙目で言った。泣きそうでありながらその視線は強く、真っ直ぐにこちらに向いている。今度は去らせない、と言っているかのように。  ……自分から彼女に会うつもりは、二度となかった。  なのに、思いつきで足を向けた先で、会ってしまった。  俺に会いたいと祈る彼女と、隣り合わせにされることで。  ──彼女とはそういう縁なのかもしれない。
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