僕と彼女、私と彼の、クリスマスイブの一夜

7/34
前へ
/34ページ
次へ
 本当にそう思った。ともすれば冷えて見えがちな色彩で、今の私の心にはぴったりかも、なんて少し前は思っていたけど、誰かと一緒に見るだけで、本心から綺麗だと感じる。 「ええ、ほんとに」  男性が、どこかしみじみとした口調でそう返した。彼にも何か、思うところがあるのかもしれなかった。  しばらくそうやって、二人並んで、イルミネーションを見ていた。周りのカップルたちにとけ込めているだろうか。  そんなことを考えていると、左手に温かいものが触れた。驚いて見ると、男性の右手が私の左手を包み込んでいる。  見上げた男性は、私の視線に気づいていないふうで前方を見据えているけど、横顔は心なしか緊張しているようだ。  意外と純情で、真面目な人なのかもしれない。見かけによらずちょっと可愛らしいな、なんて思ってしまった。  けど、間違いなく優しい人だ。場所の雰囲気に少し気が引けている私に気づいて、カップルを装うために手をつないでくれた──手だけでなく、心も温かくなるのを感じる。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

182人が本棚に入れています
本棚に追加