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僕と彼女、私と彼の、クリスマスイブの一夜
夜の町のネオンが、目にまぶしい。
特に今日は、クリスマスイブ当日なだけに、どこもかしこもクリスマスイルミネーションで飾られている。耳には古今東西のクリスマスソングが、嫌でも入ってくる。
サンタを待つ年齢はとっくの昔に過ぎた。
神の祝福を純粋に待つような宗教観もない。
だから、なのかどうかは知らないが、今の俺は間違いなく、祝福などされていない側の一人だろう。気分がくさくさする、というレベルを通り越してどん底だ。
結婚を約束していたはずの彼女に、二股をかけられた挙げ句に捨てられたのだから。
イルミネーションが輝く表通りを避けて、裏道に入った。駅までは少し遠くなるが別にかまわない。
街灯の少ない道をのろのろと歩いていると、シャッターの下りた店が並ぶ中に一軒、まだ営業しているらしい店がある。ウインドウから灯りの漏れるそこは、小さなケーキ屋だった。
ガラス越しに中を覗いてみると、先客がいる。女性のようだ。一人で買いに来ているということは、彼女も俺と同じく一人クリスマスなのか、もしくは家族のために買いに来たのか。
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