再 会

4/14
前へ
/14ページ
次へ
 夫のことは取引先の感じのいいイケメンとして認識していた。  物腰が柔らかくいつも笑顔で銀縁メガネの似合う、うちの女子社員から人気のある人だった。 「あれ?」  ある日、映画館から出たばかりの私に声をかけてきた爽やかなイケメン。  キャッチセールスか、それとも今時ナンパ?   私にこんなかっこいい人が声をかけてくるなんてありえない、人違いだろう。  見知らぬ顔を観て、怪しがり首を傾げた私に。 「すみません、怪しいものじゃない、とは思うのですが。ゴトー商事の野村です」  渡された名刺には野村(つかさ)と名前があって、瞬間私は焦り出す。 「野村さん!! こちらこそ、すみませんでした。いつものスーツ姿とは違っていて、気づけずに……大変失礼いたしました」 「いえいえ。赤坂さんは会社でも普段着でも雰囲気が同じだったので、すぐに気づけましたよ」 「え?」  名前を呼ばれたのが初めてで驚いた。  名刺交換もしたことなかったし、多分挨拶程度でお辞儀を交わしたことくらいしかない。  かっこいいと言われている彼に認識されていたことに、驚きと少しの嬉しさで笑顔がこぼれた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加