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「悲しい映画、観てたんですか?」
「いえ、普通のラブコメディを」
「そう? 出てきた時、泣いていた気がして」
あやふやに笑って首を振る。
泣いていた、ように見えたのかもしれない。
心の中は泣いていたから。
「これ、貰い物で悪いんだけど、どうぞ」
微笑んだ彼が私に手渡してきたものは、一枚のケーキ&コーヒーのチケット。
「僕、甘いのが得意じゃなくて。もし良かったら赤坂さんが使って。甘いもの食べたら何だか元気になれたりするし」
じゃあ、と爽やかな笑顔を残し、映画館に向かって歩いていくその背中に慌てて声をかける。
「あの、ありがとうございます! いただきます! 今度何か御礼を」
「じゃあ、またどこかで会ったらランチでもしましょう」
振り返った彼の笑顔に大きく頷いた。
それが最初だったと思う。
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