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そうは言っても、やり直すのは時間も魔力も足りなかった。そのまま、慣れない足で雪道を歩む。
冬が森を閉ざしてから、窓辺の青年はそこに座れども窓を開かなくなった。凍りついてずいぶんと静かになった水車の傍、窓の下に妖精は立った。
そっとブーケを持って見上げたところで、小さな氷を手のひらに生み出す。そっと息を吹きかければ、妖精の願い通りに氷は窓めがけて飛んでいった。
カツンとあたった氷に、青年が気づいた。こちらへ向けられた湖水色の瞳へ、妖精はにっこりと笑いかける。手にした氷の花のブーケを差し出すように持ち上げれば、窓辺の青年は驚いたような顔をして閉ざしていた格子の窓を開き、体を窓から乗り出した。
「表から入ってきてくれないか? 話をしよう!」
彼の初めての笑みは煌めいて見えた。その多幸感たるやめまいがするほどだ。
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