明日は、なに履く?

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明日は、なに履く?

 高校生活にもすっかり慣れて、もうすぐ冬休みに入ろうとする寒い日の夕方。 「では、会議を始めます」としっかりした声で、私から見て前方右に着席しているミチルちゃんが話し出す。 「はあい」と嬉しそうに笑いながら、自称ハーフのメイちゃんが手をビシッと挙げて返事をする。メイちゃんは前方左の席に座っている。  私は行儀が悪いけど、2人の目の前で教卓の上に腰掛けて足を組んでいる。  膝上丈で水色チェックのプリーツスカートがめくれないように両手をその上に組んで置いている。  この制服のために、この女子高に入ったといっても過言ではない。 「明日のカナエちゃんの靴下はあ、断然ルーソで!」  メイちゃんがヨシンモリに巻いた髪を揺らしながら力強く机をたたく。  彼女は最近K-POPのアイドル風の髪型を好んでいる。 「いいえ、何といっても紺ハイソックス!」  ミチルちゃんは銀フレームのメガネを指で押し上げながらハッキリと宣言する。  いつからか私たちは放課後、誰も居なくなった教室で私の明日の靴下について議論する。  ちなみに、今日は紺ハイソックス。  メイちゃんが昨日じゃんけんで負けたのだ。 「ねえぇ! 昨日も紺ハイだったじゃあん」  甘えたような泣き声でミチルちゃんに詰め寄っている。 「ずーと、紺ハイソックスで良いの。見てよ! カナエちゃんのこの美脚! なんでルーズソックスなんかで隠す必要があるの?」と断言したので、メイちゃんは何も返せずいじけたような顔をしてこちらを見る。  私はニッコリと見つめ返す。  彼女たちは私の脚に異様な執着をもっている。 「カナエちゃんもルーソ好きだよね?」下から可愛く小首を傾げられ、思わず「うん」と言いそうになったがチラッと横を見るとミチルちゃんが睨んでいる。 「ええっと、私は……」困っているとミチルちゃんが一喝した。 「メイ! 最初に決めたでしょう? カナエちゃんが困る事はしないって」  うう、と唸るだけのメイちゃんを不憫に思ったが何も言わなかった。  このソックス会議に私の意見は関係ない。  私は足を組み替えた。  2人は席に座ったまま黙って前のめりになって、私を見た。  ミチルちゃんは眼鏡をガチャガチャしている。
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