詩「ゴールド」(詩人会議掲載

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秋の大阪城公園は 誰もが銀杏に負けている 久しぶりに訪れた土曜日も 決して例外ではなかった ぼくたちはその上を歩くしかない 娘は吹奏楽部に入っている 小学生ながら 毎日忙しく過ごしているのだが その努力が実を結んだのか 全国大会に出場することになった 彼女と一緒に枯葉の絨毯を踏みしめる 遠くから聞こえる楽隊の音が 光り輝く未来を手招きしているようで どことなく空が透き通って見え 孤独だった過去を忘れさせてくれる それは祈るような色だった 会場にあふれる保護者の緊張感は 現役から退いたはずの心をざわつかす それは無言という無言の読書だ 子供の成長に栞など挟めない いつしか ぼくたちは 子供たちより 先に死ぬ その瞬間 見えるだろうか この日のこの瞬間の この身体に刻まれていく 感動たる驟雨の景色を 走馬灯を しかし会場を後にして ぼくたちはそれを見た 確かに見た 夕焼けで黄金色に光る木々の中から 眩しいほどに破顔する娘の輝きを
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