ハニエン

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 今日は日曜日。ばっちり休日だけど、私は朝8時に起きる。室温は23度。少し考えてから、網戸にして窓を開けた。  冷凍庫のパンをお皿に出して、洗ったイチゴをザルにあけたら、油をひいたフライパンにタマゴをじゅっと割り入れる。  白身がふつふつするのを待つ間、おととい買ったばかりのアイスブレンドをコーヒーメーカーにセットする。氷も、昨日のうちにちゃんと作っておいた。  春から夏に変わるこの時季、コーヒーショップに並ぶアイスブレンドは私の風物詩。  つらい花粉症が終わり、髪の毛がバクハツしちゃうひどい湿気の梅雨がくる前、朝にはちょうど良かった長袖を気が付けばめくって過ごすこの季節が私は好きだ。  寝室にしている和室の襖が開く。  8時18分。いつも通り、ひょこっと顔をのぞかせる紗夏(さな)に私は笑いかけた。 「ママ」  まんまるのほっぺには、まだまどろみが残っている。ふにゃふにゃと両腕を広げるうちの天使を私はきゅっと抱きしめた。 「ママ、おはよう」 「おはよう、もうすぐハニエン始まるから先にトイレ行ってからテレビ点けてね」 「イチゴは?」 「手を洗ったら、好きなだけお皿に入れていいよ」 私の言いつけを全部まもってから、娘はテレビの前に陣取った。時刻はちょうど8時30分、明るく元気な曲にのり、流れだしたハニエンのオープニングを食い入るように見つめている。 「紗夏、こっち来て。ごはん食べな」  ダイニングテーブルから呼ぶと娘は素直に立ち上がるけど、視線はテレビから離れない。  
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