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画面狭しと活躍するピンクや水色のカラフルなコスチュームに身を包んだあのキャラクターはハニーエンジェル、通称ハニエンという正義の味方だ。普通の女の子が変身して悪と戦うこのアニメが紗夏は大好き。
私も好き。正確には、たぶん好き。残念ながら、好きと言いきれるほどちゃんと観られてはいないのだ。
紗夏の食べこぼしを注意したり、バターをとりに行くついでにキッチンを片付けたりのながら見だけど、紗夏の頭越しに見えるキラキラしたハニエンの変身シーンには昔を思い出して、いつも「おっ!」となる。
私が子どもの頃にもハニエンみたいな魔法少女アニメがあって、強くて優しいヒロインは私の憧れだった。
きっと紗夏もそうなんだろう。
ごはん中のテレビは本当ならあまり行儀がよくないけれど、相手が憧れのハニエンじゃしょうがない。
無心にイチゴを食べつつテレビに夢中の娘を見ながら、私はアイスコーヒーを口に運ぶ。
四年前に紗夏が生まれてから、私の生活は変わった。
青山を歩き回って買い求めたオシャレなインテリアは原色のプラスチックおもちゃに席捲されたし、ブラッスリーのバゲットはハニエンがプリントされた袋パンに取って代わられた。
ハニエンを見たい娘のために日曜日もちゃんと朝起きる。
私が築き上げた私らしさを娘は軽やかに掻き乱す。それは時にうっとうしいけれど、驚くことに大体は幸福だ。
紗夏が生まれた時はあまりの大変さに本当に自分は育児なんてできるのかと思った。
赤ちゃんの紗夏は私が庇護しなければ簡単に死んでしまうか弱さなのに、傍若無人なエネルギーに満ちていて、「勘弁してよ」と「世界一愛しい」という気持ちが万華鏡のようにくるくる入れ替わるうちに、いつのまにか私はそれなりに母になれた気がする。
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