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3
リッカは黒いチューリップの花を咲かせることに成功したらしい。そして、それをクッキーの材料にした。
第二皇女はある男を忘れたがっていた。リッカが軽い念を込めると、それはいとも簡単に叶える事ができた。
リッカはチューリップが入ったクッキーの余りを家に置きっぱにしてしまった。そして、それをアンネが食べてしまう。
アンネは倒れて、リッカが戻るころには記憶をなくしていた。
そう、リッカのことだけ。
眩しい光が瞼を撫でる。アンネはまだ眠りたいと目を強く瞑るが、自然はどうも私を起こしたいらしい。
私はゆっくりと目を開いた。
「アンネ!!!」
ふと、声のした方に顔を向けると黒い艶めく髪の美しい男の顔が。男はずっと、私の手を握っていたようだ。
しかし、男はまた仏頂面になった。
「俺はリッカだ。俺とお前は結婚している」
怖い顔で言葉を続ける。
「「ここは俺とお前の家」」
声が重なった。一つは、低い怒ったような声。もう一つは高い優しい声。
リッカはじわじわと目を見開かせた。
3年前に結婚したこと。それから私が「リッカと」どう過ごしたのか。うん、覚えてる。
リッカ、今まで本当にごめんね。
涙が溢れては横に流れていき、枕を湿らせた。
「また、会えたね」
宮廷錬金術師と固い称号を持った1人の男は、今日初めて人前で涙を見せた。
それは、子供のような泣き方だったらしい。
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