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リッカはあの後一瞬で平常に戻ると、また怖い顔をして出ていった。彼は何も言わなかった。
1人取り残された私は、どうすることもできずに頭を抱える。
彼は私を愛してくれている、直感的にそう思った。私がもし、彼との記憶を失くしているというのなら、彼はどれだけ辛い思いをしただろう。
私と彼はどんな出会いをしたのか、どんな人生を歩んできたのか気になって仕方なかった。
私はいつもは掃除をするのだが、今日はサボってリッカの部屋に忍び込むことにした。静かに部屋に入り、パタリと扉を閉める。
部屋は初めて入ったはずなのに、初めてという感じがしなかった。
小型の机に試験管が大量に乗っていて、横には大きな本棚が二つ。もちろん難しそうな本がぎっしりと詰まっている。
壁にも模型のようなものが大量に飾ってあった。何より目に入ったのは外に咲いているのと同じ勿忘草の苗が大量にあったことだ。
あの庭の花は彼が植えたものなのだろう。部屋に散らばる花々を見て、そう思った。
私の視線がふと、机の上に散らばる三冊の分厚い本に目が留まる。本‥ではなさそうだ。
近づいて見てみると、「Diary」と記してあった。
「これ‥あの人の日記‥?」
日記をとるような人には見えなかった。しかし本棚に目を向けると、小さな頃からちゃんと記しているようで、同じような本状の日記が大量に並べられていた。
日記は、三年前からのものが机の上に置いてあるようだった。
本来は人のものなど見てはならない、そう思う。しかし、3年前は確か私とリッカが結婚した時期だ。もしかしたら謎が解けるかもしれない、私はそっと日記に手を伸ばした。
最初に三年前の日記を手にする。
⋯
◯月×日
今日はアンネに会える日だ。今日は彼女の誕生日、俺はプロポーズをしようと思う。
受け入れてもらえるかわからないが、気持ちをちゃんと伝えるつもりだ。
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