episode1 運命のオーディション

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1時間後… オーディションが始まった。応募者は私を含めて64人。顔写真の審査を通った、基本的なルックスが整った人がこの会場にいる。私もその一部だと思うとますます緊張する。 私は64人中53番目に歌を披露する。課題曲は大好きなえみまるさんの “自転車を漕ぎながら”という曲だ。 何度も聞いて歌っているので多少の安心感はあるものの不安も消えずに残っている。 「次の駒賀なこさん(こまがなこ)さんどうぞ。」 「は、はいぃ!」 声が一瞬裏返ってしまった。恥ずかしい。 「えー、まず自己紹介をどうぞ。」 焦りすぎて自分の名前がわからなりそうになった。 「駒賀なこです。15歳、誕生日は10月31日です。」 自己紹介は手応えがありそう。うんうんと頷いてくれてる!よかった。 「では、本題の歌をどうぞ。」 『本題』。その言葉が私を緊張に追い込んでいく。一周回って安心してしまうぐらい。 「はい!」 私はいつものように自転車を漕ぎながらを歌った。 「ありがとうございました。」 退室する前に審査員の人達の顔や仕草を見ると悩んだりしている様子が見られた。合格は、できないと思っていた方がよさそうだ。 合否は神様や運命が決めるものではなく、私の実力と努力で決まる。
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