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星の光ひとつない暗闇の中。
ひとり渡し舟に乗ったニーナは、黒い川を行く。
周囲には深い霧がたちこめ、一寸先さえ見えない。
渡し舟は、どんどん前に進んでいき、やがて霧が晴れ、ぼんやりと温かい光が見えてきた。
川岸に到着した舟から、ニーナは降りた。
そこは色とりどりの花が咲き乱れる、美しい場所。
確信めいた予感が、彼女の頭に浮かぶ。
この花畑の向こうで、きっと彼が待っている。
しばらく歩いて行ったところで、その予感は現実のものとなった。
「……ニーナ」
その姿は、最後に言葉を交わしたあの日のまま。
微笑む彼を目指して、ニーナは駆けていく。
「マルクス!」
私の最愛の人。
……やっとまた、会えた。
今度こそ、本当に。
マルクスの胸に飛び込んだニーナは、その身体をぎゅと抱き締めた。
【完】
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