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「爺ちゃんと父さんを起こしてくるっ」
「ちょっと待って!1人にしないでっ」
バタバタと母さんが起き上がる。
2人で爺ちゃんと父さんを起こし、黒い液体を見て貰おうとしたが、部屋に戻った時は何も残っていなかった。
「ホントにあったのよ!黒い液体がっ!」
「分かった!分かったから」
俺よりも母さんの方が驚いたらしく、爺ちゃんと父さんを変わる替わる、揺さぶった。
「なんか、黒い巨大なカエルみたいだった。鏡を向けたら溶け出して…鏡がなければ、まだ逃げ回っていたかもしれない」
俺がみんなに言うが、全員が黙っている。
一番に口を開いたのは爺ちゃんだった。
「……今日はみんなで寝よう。その方がいいだろう。弓弦も安心だろ?」
「うん」
「鏡も忘れずにね」
結局その後何もなかったが、朝まであまり眠れなかった。
とにかく鏡のこと……もし、あの女性に会えたら、お礼を言わないと。
失礼な態度とってしまった……
その夜のことだった。
風呂から出て、自分の部屋に戻った時だった。
「あの鏡は役に立ちましたか?」
後ろから声が聞こえて、俺は勢いよく振り返る。
「あっ!鏡の!」
例の女性が立っていた。
笑う訳でもなく怒っている様子でもない。
俺は鏡を手に取ると、何故か慌ててしまったので、やたら大きな声で話してしまった。
「ありがとうございます!あなたを信じなくてすみません!突然でこわかったものでっ……えっと!」
「私の名前は、かやの。信じられないかもしれないけれど、私の体は別の所にあって、あなたを助けたくて姿を現しています」
「昨日、酷い目に遭いました。あなたの、いや、かやのさんの言うことを信じます。鏡をありがとう。俺は弓弦」
かやのさんは、少しだけ口角をあげた。
「ゆずるさん」
「あ、ゆずるで大丈夫です」
多分、年も変わらないだろう。
「じゃあ、私もかやので。ゆずる、私はあなたの近くにある村に住んでいるの。分かるでしょ?あなたが事故にあった日、村で祀られている神様に日頃の感謝を伝えるお祝い事があった日なの」
「……でも!あれは車が勝手に突っ込んで来て…!」
「分かってる、分かってるわ。あの村は変わってる。
母と私は霊感がある。そのせいで、村で神の遣いと言われているけれど、正しい事を話しても言うことを聞いてもらえないし、高い塔から出してもらえないし、良いことなんてなんにもない。あなたの事も聞いていたわ。お祝いに難癖がついてしまったと。それで、神様にあなたを捧げる事で怒りを鎮めようとしているの。
……自分勝手にも程があるわ。」
「それで、昨日のあれは?」
村人が作った呪いの人形よ。
どこかで買って来た呪いの類いを集めた本を読んで作ったんでしょうね。私のお呪いをかけた鏡で充分なんとか出来ると思う」
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