夢見の鏡

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「ちっ……どうしたらいいんだよ」 「とにかくここを早く離れるべきよ。村人は執念深いの」 「と、言っても病院での治療が残ってるんだ。すぐには離れられない」 「このままだと死んじゃうわ。向こうは強力な化け物を用意してくるかもしれない」 こんな時代に化け物なんてなんか変な感じだ。 だけど、俺はみた。 巨大なカエルの化け物を。 信じるしかない。 「私の知らない事も沢山あるの。村から出られないからわからないけれど、これくらいしか助けてあげられない」 「……君を助ける方法は?」 かやのは一瞬黙った。 「……村にある塔にずっと閉じ込められているの。そこから出られたら…… でも、施錠がされているし、かわるがわる人が見にくるの。難しいわ。 神とかいいながら、ただ、自分たちの為に閉じ込めているだけよ」 可哀想に思った。 霊感があると言うだけで、閉じ込められて。 「とりあえず、今晩も鏡を手放さないで。今はそれくらいしか出来ないから、私もなにか考えるわ」 そういうと。かやのは、フワリと消えた。 前にも見たがやはり、人が消える姿は何だか不思議な感覚だ。 その晩は化け物は現れなかった。 しかし、夢の中で大きな眼に睨まれる悪夢を見て、次の朝、ぼんやりと目を覚ました。 だるい。 カーテンの隙間から漏れる陽光で朝だと知る。 重い体を起こし、枕元を見ると。 ない。 鏡がない。 かやのが何か事情があって持って帰ったのだろうか? とりあえず、ふう。とため息をつくと、布団から出る。 まだ庇わなければ歩けない手足を動かし、みんなの居る広間に行った。 「弓弦、あんた酷い顔色だけど、大丈夫?」 顔色が悪いのかと、母さんの一言で知る。 「寝覚めが悪かったんだ。大丈夫」 声もあんまり思うように出ない。まるで、風邪をひいたような声だ。 「風邪かしら ?熱は?」 「ないと思う」 言いながら、もしかして、村の奴らの仕業かも…と思ってしまう。 もそもそと、朝ごはんを食べて、「もう少し寝る」と部屋に戻った。
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