夢見の鏡

11/15
28人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
襖を開け、敷きっぱなしの布団を見て、鏡がないのが再び気になる。 なんで… かやのが持って帰ったのなら、声をかけてくれてもいいのに。 色々考えるが頭がうまく回らない。 とりあえず寝ようと掛け布団を開けた時だった。 「!!」 布団の中で小さな子供が俺の顔をのぞいていた。 覗くと言っても、相手はのっぺらぼうで、目も鼻も口もない。男か女かもわからない。 ただ、目線が合っている気がする。 「ひ…」 布団から抜け出そうとしたが、子供の動きの方が早かった。 俺の髪をギュッと握って自分の顔と近づけた。 そして、口ができたかと思うと、にちゃあと笑った。 「きゃははははっ!」 高い声が耳をつん裂く。 「なんっ…何なんだ、お前は!離せ!」 子供は長い舌を伸ばすと俺の顔を、一舐めした。 「わ、わぁあ!やめろ!」 「何なんだ、お前は!何なんだお前は!何なんだ…」 俺の真似をしながら、 子供の声が低いトーンに変わっていく。 髪をひっぱられるのが痛い。 早く何とかしないと。 「な、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」 効果があるのかないのか分からないが、とりあえず唱えて見る。 「ぎゃーはははは!」 あぁあ、やっぱり全然効いてない。 そして。こんなに騒いでいるのに親たちは気が付かないのか? 早く気づいてくれよ! 「母さんっ!母さん!」 大声で叫んだ。 けれど、なんの返事もない。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!