夢見の鏡

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無理矢理に髪を引っ張られ、大きな口を開けられた。 咬まれる! その時、シャッと襖が開いた。 母さんだった。 化け物を見た瞬間、母さんは怯んだが、次の瞬間走って来て、子供をバシンバシンと叩き、「どっかに行ってしまえー!」と叫んだ。 子供は俺を齧りそうなのをやめ、青い炎と共にボゥっと消えた。 「弓弦、大丈夫?」 「……うん、大丈夫。……なんで、俺が化け物に絡まれてるって分かった?」 「なんか……あんたに呼ばれた気がしたのよ。」 「ありがとう。もうダメかと思った」 「……お祓い…行ってみよっか」 母さんの言葉に俺はゆっくりと頷いた。 それでなんとかなるなら、かやのの世話にならなくていいし。 でも、かやのはいつまで経っても塔から出られないのだ。 それは助けてあげたい。 家の外に出て、気持ちのいい朝に、いまさら伸びをする。 都会だともうすでに暑くて、蒸し暑い。 ただ、今は早く帰りたいと思っていたが、あの化け物たちは多分追いかけてくると思った。 もう呪いをかけられて、どこに行こうが付いてくる。 そんな気がしていた。 母さんの言う通り、お祓いをすれば、もう出てこないかも。 もう、そう期待するしかない。 村の方を見るとポツリポツリと家が立つ中に、一つだけ三角柱の長い建物が見える。 もしかして、あれが塔か? 塔と言っても、かやのに言われなければ気が付かないほど、見えにくく、そんなに高くはない。 周りの家が平屋か二階建て、その中に4階建程の三角柱の木造建築がある感じだ。それが塔。 ただ、山の端にポツンと変わった建物があるのが気味悪かった。 かやのはあそこにいるのかもしれないなら助けたい… 母親もいると言ってたな… なんとか助けたいけれど。 何故彼女らだけ、村に住みながら馴染んでないのだろう……村人と同じ感情を持っていてもおかしくないのに。
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