夢見の鏡

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「魂を捧げるってことは俺は死ぬって事だよな?」 「………そう、だと、思う」 かやのは言いにくそうにして下を向いた。 長い髪がサラサラと流れる。 「何でかやのは、村に住んでるのに村の教えみたいなのに染まらないんだ?ずっと育ってきたなら、色々この訳ありな村の事分かるんじゃないか?」 下を向いたまま、何度か続けて瞬きをする彼女。長いまつ毛がパタパタと動いた。 「私、元々はこの村の人間じゃないの。両親が小さい頃事故で亡くなって、私だけが生き残った。親戚をたらい回しにされて、結局里親になってくれる人を探されて……今の母が引き取ったの。神を無理矢理つくるのには反対していた母だけど、村人から強く言われて仕方なく……霊感のある私を見つけて」 かやのは話を続ける。 「でも、私の体…本体がね、外に出られるのは1週間に1度。それも毎週いつなのか決まってないの。しかも、勿論監視がついてるし、買い物は行けない。着る物も着物だと決められてるし、1カ月に1度、村人に神様だとお祈りされる日があるんだけど、その日だけは、綺麗な着物を着せてもらえるの。今のお母さんは、ずっと一緒に過ごして来て、私に情が移ったのね。そんな私を可哀想だと思ってる。だけど、逃げる術はみつからないの。こうして、霊体を飛ばすことはできてもね」 彼女はフフッと自虐気味に笑った。 「そっか……大変だったんだな」 「うん。でも、今はあなたの命の方が大変よ。何とか事情を探ってみる。今は眠っていて。すこしでも、このお札がお守りになるはずよ。しばらく額に乗せていて」 着物の懐から何がかいてあるのかわからない文字が書いてある長細い紙を渡された。 「ほら、お布団に横になって。そして、これを、こう。」 お札の上の方をチロッと舐めると、それを俺の額に貼り付けた。 「ごめんね、私の唾つきで」 「大丈夫」 平気な顔して大丈夫と言ったものの、内心ちょっとドキドキする。 かわいい女の子に額にキスされた気分になった。
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