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とうとう村の前まで来た。山の中に入っていくと、ポツリポツリと家がある。
かやのがいるのは、村の真ん中の方だ。
ここからはあまりよく見えない。
一歩中に入ると、冷ややかな目線を感じる。
もっとこっちに近づいてきて、何かされるかと思っていたから、ジロジロ無表情に見られるだけで済んで良かった。
それでも、視線は痛いし、何気に腹が立つ。
爺ちゃんが話していた動物の干し肉らしきものを見た。
あれの生物を投げ付けられなくて良かったと思う。
モヤモヤしながら村の端、古くなり木の傷んだ塔の前に来た。
錆びかけた大きな鍵がかけられていたが、こう言うところだけは少し近代的というか、0から9まであるボタンを押せば開くタイプの鍵だった。
同じとこを押しているのが、薄くなった数字のおかげでわかる。
2と5と7と9。
何度か繰り返せば開きそうだ。
もしかすると助けられるかも知れない。
塔を見上げたが小さな小窓があるだけで、かやのがいるかどうか分からない。
声をかけるのは、かやのに危険があっても困る。
今日はこの辺で帰るか。
あまり長居してもきっとロクなことはない。
俺をじっと見ている輩もいる。
踵を返し、来た道を戻る。
すると後頭部にコツンと何かが当たった。
振り返ると、ニヤニヤした老婆が立っている。
手には小石。
更に後ろから肩にコツンと当たる。
また振り返ると、同じくニヤニヤした男が立っていた。
同じような顔で同じように笑う村人にゾッとする。
俺はまだ完全には治らない足を引きずりながら走った。
後ろからは沢山の小石が飛んでくる。
2人だけではないようだ。
自分たちの仲間以外を排除するように飛び交う石の中をなんとか脱出して、村を振り返った。
途中まで追いかけてきていた、村の奴らがこっちを見ている。
本当に気持ち悪い。
それ以上何もされなくて良かった。
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