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その夜、かやのが俺の部屋にきた。
勿論幽体な訳だが、怖いという感情はもうない。と言うか、その幽体が怒っているじゃないか。
「何で村へやってきたの?危ないじゃないの!?」
「いや、なんとか助けられたらと思って」
「……私のことはいいの!私にあなたの魂を捧げるって言ってたくらいなのよ!?もし捕まえでもされてたら、どうなっていたかわからないのに!」
プリプリ怒るこれが幽体だなんて、ちょっと笑ってしまうけど、心底心配してくれている証拠だ。
「ありがとう。でも、俺はかやのも助かって欲しいんだよ。勿論かやののお母さんも」
彼女は目線を下げて言いにくそうにいう。
「お母さんは、足を鎖で繋がれて長いこと動けなくなってる。だから走るのも無理だと思うの…血のつながらない人でも、私には優しいお母さんだから、置いていくことも出来ないし」
「……」
「それに、この村が何を崇めているかわからないけど普通の神様ってかんじじゃないし…絶対変なものよ」
「まぁ、な」
「うん」
「どんなものかちょっとでも分かんないのか?」かやのは少し黙った後、口を開けた。
「お母さんの様子がおかしいの。
お母さんも私と同じく霊感のある人だから、かな?
なにか、体に入ろうとしているのを拒んでいるわ。
でも、たまに目が金色に光っているの」
「多分、その何かを村の連中が崇めている感じなのかな」
「そう感じたわ。なぜ教えてくれないのかわからないの。お母さんも自分が怖いって言ってた。きっと、お母さんの次は私の番だわ」
下を向いて声が小さくなっていくかやの。
その気持ちは分かる。
自分が何かにさせられて、あの君の悪い連中にほとんど外にも出させてもらえず、その場所に括り付けられるようなものだから。
「とりあえず元気だせ!俺はこの通り大丈夫だから、かやのは自分とお母さんの心配してろ」
「……村の人たちが何を考えてるかわからないけど、もう鏡やお札だけじゃなんともならなくなってくるかも」
「………」
弱音を吐くかやのは、うっすらと透明になり消えそうだ。
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