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「とりあえず、持っておくよ。嘘かホントが分からないけど、化け物が怖いし。
母さん、今日だけ一緒に布団敷いてねてよ」
「はあ、一緒に寝るって、もう大人なのに。」
「甘えて言ってんじゃねんだよ、怖いんだよ」
「お母さんだって怖いわよっ。……仕方ないわね、お父さん、布団運ぶの手伝って」
「うっす!あざっす」と答えるとパシンとお尻を叩かれた。
「ほんと調子乗りね!」
俺の部屋にもう一つ布団が運ばれた。
一人で居るよりは、気分がちょっと良くなる。
***
電気を消す前、事故当日の細かな説明を母さんから聞いた。
入院している時も事故のことは聞いていたけど、きちんと聞けていなかった。
なぜかと言うと、入院していた病院にもあそこの村人が入院してくる事があるからだ。普段はなるべく村独自の野草を使った薬だの、呪いなどで、病気を治すようだが、それも無理な場合、ようやく街の病院へ行かせてもらえると言う感じだ。
村だけの決まりなのか、余所者は排除したがるし、何にでも因縁をつけてくるっていうのがあるから、事故を起こした時の様子を母さんは病院では話したがらなかった。
退院して来た今、初めて詳しくきいたけれど、さっきも言ったように、因縁をつけるのが好きな連中だ。
祝い事の荷物を運んでいたのに、どうしてくれるんだ!とワーワーと父と母に文句を言って来たらしい。
勿論、俺が飛び出した訳ではない、向こうの奴がすごい勢いで突っ込んで来たのだ。
よく死ななかったもんだと自分で思う。
「あとは保険屋のやりとりよ。でも、向こうから謝罪の連絡なんて全くないわ。ホントに腹が立っちゃう」
「だな!祝い事なら、尚更安全運転しろ!だな」
「だけど、どれだけ腹が立ってもあの村に入って行くことだけはやめた方がいいって、お爺ちゃんが。もし、万が一、これ以上向こうに恨まれでもして、殺されたらたまったもんじゃないって」
怒りながらも両肩をすくめ、諦め顔の母さん。
「でも、警察がいるじゃん」
「お呪いで殺されたりしたら、直接手を出してきた訳じゃないから。そんなことでまた怪我したり、下手をしたらそれ以上のことがあったら困るから、やめときなさいって言ってたわ」
「なんだ、爺ちゃんらしくねぇなぁ」
お呪いで人を殺すなんて、そんな事本当にできるのか?
思い込みとかじゃないんだろうか。
それなら、俺も怖がらなくて良い話だけど…
結局怖いんだよな…
枕元に手鏡を置き、そして、眠ることにする。
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