夢見の鏡

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*** 「スマホばっかり触ってないで寝なさいよ」 母が眠たそうな声で俺に話しかける。 「…うん、もうすぐ寝る」 俺はスマホを置き、目を閉じた。 しばらくして、俺もウトウトして、眠りにつきそうになった時だった。 誰か歩いてくる音がする。 廊下の向こうから歩いてくる感じ。 深夜だし、父さんや、爺ちゃん、婆ちゃんも、もう寝床についたはずだけど…… 何だ、トイレに誰かが行くのかな。 近づいてくる足音は俺の部屋で止まった。 その瞬間、俺は目を閉じて寝たふりをした。 見ては行けない、そんな気がしたからだ。 シャア…とゆっくりと襖が開いた。 俺の鼓動が早くなる。 部屋に入ってくると、ベチャッという濡れた音が聞こえた。 薄目を開けると真っ黒の足が見えて、俺は再び目を閉じた。 "これがあの女が言ってた黒いヤツか?" 俺には霊感なんてないけど、悪いものだと言うことだけは伝わってくる。 黒い足は、俺の布団の周りをまわっていた。 時折り、ポタリ、ポタリと水滴が落ちる音が聞こえるが、俺は寝たふりを続ける。 "こんな怖いのに、はっきり言って起き上がる勇気なんてない!" しかし、向こうは何度も何度も歩き回り、最後には俺の顔を覗き込んで来るのが分かる。 はぁー…はぁー、と息遣いが聞こえて、怖さの余り、体に力が入る。
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