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「スマホばっかり触ってないで寝なさいよ」
母が眠たそうな声で俺に話しかける。
「…うん、もうすぐ寝る」
俺はスマホを置き、目を閉じた。
しばらくして、俺もウトウトして、眠りにつきそうになった時だった。
誰か歩いてくる音がする。
廊下の向こうから歩いてくる感じ。
深夜だし、父さんや、爺ちゃん、婆ちゃんも、もう寝床についたはずだけど……
何だ、トイレに誰かが行くのかな。
近づいてくる足音は俺の部屋で止まった。
その瞬間、俺は目を閉じて寝たふりをした。
見ては行けない、そんな気がしたからだ。
シャア…とゆっくりと襖が開いた。
俺の鼓動が早くなる。
部屋に入ってくると、ベチャッという濡れた音が聞こえた。
薄目を開けると真っ黒の足が見えて、俺は再び目を閉じた。
"これがあの女が言ってた黒いヤツか?"
俺には霊感なんてないけど、悪いものだと言うことだけは伝わってくる。
黒い足は、俺の布団の周りをまわっていた。
時折り、ポタリ、ポタリと水滴が落ちる音が聞こえるが、俺は寝たふりを続ける。
"こんな怖いのに、はっきり言って起き上がる勇気なんてない!"
しかし、向こうは何度も何度も歩き回り、最後には俺の顔を覗き込んで来るのが分かる。
はぁー…はぁー、と息遣いが聞こえて、怖さの余り、体に力が入る。
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