鶏卵食堂にようこそ~やなこと全部、卵に包んじゃえ~

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 この店は卵料理が五百円玉一枚と百円玉七枚で食べ放題。  卵を混ぜる音が店内に響いている。かちゃかちゃかちゃと聞いていれば、愉快になる。それが油と共に焼かれる音を聞くと、もうたまらない。  おばちゃんが最初の卵焼きを持ってきた。 「はい、どうぞ」 「ありがとうございます。いただきます」  ふんわり甘い卵焼きが疲れた心に染み渡る。甘すぎもせず、くどすぎもせず。だし巻き卵も隣に用意されていて、香ばしさが鼻をくすぐっていく。食欲が限界突破し、あっという間に何種類かある卵焼きをたいらげてしまった。  次に僕がいるカウンターに提供されたのは、オムレツだ。しかもただのオムレツではない。箸で切り分けるととろり中から温かい中身がマグマの如く流れ出してくる。それと同時に紅い粒々も見える。  これは辛子明太子入りのオムレツなのだ。  元々明太子は好きな部類なのだが、卵と一緒に食べるとこれはまた美味。辛さを調和してくれる卵の美味しさがまた、ある意味刺激的。「美味い美味い」と食べてしまう。これは白いご飯が欲しいと思って、頼んでしまった。白飯が提供されてくる。  やはり暖かいご飯は最高だ。明太子にも合う。これがお代わり自由だなんて、夢のような話。今の僕は世界で一番幸せ者に違いない。  共にめんつゆ漬けの卵を出してくれる。これは二杯目の白飯と共に食べていく。落ち着いためんつゆがしっかりと染み渡って病みつきになる。これなら何度も食べてみたいが、色々種類を食べてみたいとの思いで自制しておいた。一種類のものでお腹が一杯になってはつまらない。  折角、何もかも忘れたくて美味しいご飯を食べに来たのに。
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