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ともにまた
二〇一九年春。同期がA社を去った。共に支店を守り立ててきた第一の戦友。トップの暴走で会社が傾く中、まるで魔女狩りのように大勢の社員の首が切られていくのだが、その走りが彼だった。
二〇二〇年春。まだ泥舟に居残っていた私は、上司ふたりに連れられて職を辞した。B社が設立された。新型コロナの煽りをもろに受け、A社とは比べ物にならないほど小規模なスタートだった。
二〇二一年春。A社が次々と事業を畳んでいく噂を耳にしながら、私達B社は歯を食いしばって経営を続けていた。こうした苦難の中、何度も脳裏に蘇ったのは、あの同期の朗らかな笑顔だった。
二〇二二年春。新たに一名だけ雇うことを上司が許してくれた。私はすぐさま同期と連絡を取った。ただし、口にするのも悲しくなるほど辛い契約だった。彼は別の会社からも誘いを受けていた。
二〇二三年春。コロナ禍が明けつつある今、仕事量は数倍にもなり、追い詰められる瞬間もある。そんな時、隣のデスクから差し伸べられる歴戦の手のひらがある。彼は今も朗らかに笑っている。
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