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車窓から
助手席から外を眺める。特段、変わり映えのしない風景。街ゆく人も、店もビルもマンションも毎日変わらずそこにある。
ふと目の端に捉えたブルドッグ。飼い主の向きとは反対に走り出そうと前足を出した。犬の前足が地面につく前に飼い主がリードを引く。犬は自分が思ったよりも進まない状態に飼い主を見上げる。
車中には飼い主の声も犬の声も聞こえない。
ただ、犬の口が開いたり閉まったりしている。きっと吠えているのだ。
吠える先は車道。ブルドッグは車道に向かっている。飼い主は必死で反対にリードを引く。
なんだか可笑しい。
私は思わずプッと吹き出した。
運転席の母が「何?」と訝しげに問う。
私は窓の外に過ぎ去った1人と1匹を頭に思い浮かべながら「なんでもない」と母に返事をした。
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