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記憶に残っているのは、握りしめた白くて小さな手だけだ。
夢だが、唇の感触がやけに生々しい。チェイサーは唇に指をあてた。
が、現実は・・・・起き上がり布団をめくった。
股間を確認して、黒髪の頭をガシガシかきむしった。
ああ、まったく・・
俺は10代のガキではないのだが、今年で34才になる。
チーン、チーン
棚の置時計が9時を告げた。
昨夜は、深酒しすぎた。
チェイサーはこの国が初めてだった。
情報収集を兼ねて、酒場で知り合いになった男たちと盛り上がったのだ。
クーーン
黒犬のダリルがベッドに前足を上げて、頭を寄せてグリグリしてくる。
「よしよし、腹が減っているんだな、悪かったな」
犬の頭を軽く拳で叩いた。
「ホークアイも飯だな・・と言っても・・」
チェイサーは、窓から空を旋回している鷹を見上げた。
「あいつは自前で調達するからな」
ベッドを降りて、腕を振り回しながら洗面所に向かうと、ダリルも尻尾を振って後を追った。
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