5人が本棚に入れています
本棚に追加
酒場の面接
その街の繁華街は賑わっていた。
密集している建物のあちこちの窓は開け放たれ、女たちのかん高い嬌声が響く。
今回の面接は、風変りだった。
相手が酒場を指定してきたのだ。
それも、軍隊の士官クラスが使う高級な場所だ。
その酒場のドアを開けると、給仕の女がすぐに声をかけた。
「お客様がお待ちです。どうぞ、こちらに」
酒場は、客で賑わいを見せていたが、奥の一角に衝立で仕切られている場所があった。
給仕の女がニコッと笑ったので、チェイサーはチップをその手の平に置いた。
「お客様、こちらです。ごゆっくりどうぞ」
衝立の隙間から顔を覗かせると、一人の男が、どっかり座って酒を飲んでいる。
「よぉ、チェイサー、ひさびさだな」
よく知った顔で、緊張が一気に抜けた。
「お前だったのか。ブラントン・・」
ブラントンと呼ばれた男は、仕立てのいい上着を着て、裕福な商人風だが、
目つきは素人らしくない、鋭さを持っている。
キナ臭い裏の業界を知っている人間には、ヤバイ奴だとすぐにわかるだろう。
チェイサーは勧められる前に、対面の椅子にドカッと座った。
旧知の仲だ。
遠慮はいらない。
最初のコメントを投稿しよう!